第2・5事件原告ら準備書面(4)の説明
弁護士 吉川亮太
今回、私たちが提出した書面は、IR事業用地の東に隣接する夢洲変電所の建設予定地が、昨年、1平米あたり約33万円と鑑定評価された事実を明らかにし、IR事業用地が1平米当たり12万円と鑑定評価され、それに基づき算出された賃料は「適正な対価」ではないと主張するものです。
IR事業用地の借地権設定契約に先立ち行われた令和元年の不動産鑑定では4社中3社が、令和3年の不動産鑑定では3社中2社が、IR事業用地の基礎価格を1平米あたり12万円として、これに基づき1平米当たり428円という賃料を算定しています。
一方、大阪市は、昨年、関西電力送配電株式会社に対して夢洲変電所用地を売却するために、不動産業者に不動産鑑定を依頼しました。1回目の鑑定では1平米当たり約15万円と鑑定され、大阪市はこれを不動産鑑定審議会、この審議会は大阪市の財産処分価格が適正なものであるかをチェックする諮問機関ですが、これに諮問しました。しかし、審議会は、「1平米あたり約15万円は安すぎる」として、答申を保留しました。そこで、大阪市は、2度目の鑑定を依頼し、再度審議会に諮問しましたが、これも答申保留とされました。
大阪市は、3度目の鑑定にあたり、3社の不動産鑑定業者に鑑定を依頼しました。3度目の鑑定では、土地の最有効使用を高層ホテル、最寄り駅を夢洲駅とするなど適正な条件に修正して鑑定されたところ、1平米当たり約33万円と鑑定評価されました。大阪市は、この鑑定評価額で審議会に諮問したところ、適正な価格であると答申されました。
IR事業用地と夢洲変電所用地を比較した場合、どちらも夢洲内の一部であり、その地理的条件や周辺環境はほとんど変わりません。両者の土地には大きな差異があるわけではなく、評価基準として考慮されるべき要素においても、非常に似通っています。にもかかわらず、IR事業用地が12万円、変電所用地が約33万円と、大きな差をもって評価されているのは明らかに不合理です。IR事業用地が不自然に低額に評価されているとしか言いようがありません。そのプロセスにおいて何らかの不正があったことが示唆されているのではないでしょうか。
大阪市の態度も問題です。同じ夢洲内の隣接した土地であるのに、一方では12万円が適正であると主張し、もう一方では約33万円を適正だとしているのです。誰が見ても不自然です。
そもそも、不動産鑑定評価は土地の適正な価格や賃料を決定するために不可欠なものであり、これが公正かつ適切に行われなければ、土地の所有者に対して深刻な不利益をもたらします。特に、本件のような公有地、IR事業用地の鑑定評価が公正かつ適切に行われていなければ、その影響が所有者である大阪市、ひいては大阪市民全員、その他にも不動産取引や地域社会に及び、社会的に極めて申告な問題をもたらすことをご理解いただきたいと思います。そしてこの問題を放置することは、行政及び司法に対する信頼を著しく損なうものです。
「適正な対価」とはいえない格安賃料でIR事業用地を貸すことは、大阪市民にとって大損害です。基礎価格12万円を基に算出された賃料が「適正な対価」でないこと、この賃料と定めた大阪市長らの責任を追及するための資料として、今回、変電所用地に関する主張を追加いたしました。以上です。